千葉ポートアリーナ「大相撲春巡業千葉場所」体験記

【体験レポート】大相撲春巡業千葉場所を訪れて感じたこと
――千葉ポートアリーナにて
2025年4月13日、千葉ポートアリーナで開催された「大相撲春巡業千葉場所」に足を運びました。普段はテレビ越しに観る力士たちの姿を、目の前で感じることができるこの機会。巡業という性質上、本場所とはまた違った雰囲気の中で、相撲の奥深さと文化に触れる一日となりました。
朝早くから開場前の列に並びながら、会場の空気に自然と気持ちが高まっていくのを感じました。こういった「始まる前の静かな期待感」は、スポーツ観戦の楽しみのひとつかもしれません。
稽古と取り組みで見えた、力士たちの姿勢
この日の開場は朝9時。私は少し早めに会場へ向かい、8時半前には千葉ポートアリーナに到着していました。すでに多くの観客が並んでおり、開場直前には列がさらに3倍以上の長さに広がっていました。この時点で、相撲という文化がいかに根強く、そして幅広い層に親しまれているのかを肌で感じることができました。
いざ会場に入ると、まず目に飛び込んできたのが、幕下力士の稽古の様子。そして、入場したファン一人ひとりに笑顔でパンフレットを手渡していたのが、地元・千葉県出身の琴勝峰関でした。まだ始まったばかりの時間帯でありながら、土俵の周りにはすでに幕内力士の姿もちらほらと見られ、全体がゆるやかに活気づいていく様子が印象的でした。
この時間帯には、土俵での稽古と並行して「力士握手会」というイベントも開催されていました。入れ替わりで複数の力士と直接触れ合える内容で、稽古も見たい、でも握手もしたい……と、贅沢な迷いが生まれる瞬間でもあります。どちらを選んでも得られるものは多く、こういった自由な選択ができるのも、巡業ならではの楽しさかもしれません。
午前中いっぱいは、十両から幕内、そして大関や横綱へと続く稽古が続いていきます。豊昇龍、大の里、琴桜取り組みの取り組みさながらの稽古はずっと見ていても飽きない不思議な感覚です。取り組み本番とは違う、稽古だからこそ見える“素”の姿や、繰り返し技を磨く姿勢には、ある種の緊張感と美しさがありました。個人的にはこの稽古の時間こそ、最も深く力士たちの魅力が表れる瞬間だと感じています。一山本関、王鵬関のお二人にはぜひ会いたかったので、(近くで見れただけですが)少なからず夢もかなった満足感でこの時点ですでにおなかいっぱいでした。
午後になると、地元の子どもたちと力士の取り組みが行われ、笑い声と歓声が土俵に響きました。相撲甚句や初っ切り(ユーモラスな取り組み)、髪結い実演などもあり、相撲という競技だけでなく、その周囲にある文化や伝統芸能にも触れられる構成になっていました。
そこからは序の口の取り組みを皮切りに、十両、幕内と続き、土俵入りや横綱の土俵入りといった見どころがぎゅっと詰め込まれています。一日を通して、観客を飽きさせない工夫が随所に感じられ、まさに“相撲を体感する日”として充実した内容でした。
相撲をより身近にする、巡業ならではの体験
巡業の魅力は、相撲の取り組みだけではありません。会場内では相撲甚句やちびっ子相撲、先にも書いた握手会コーナーなどが設けられ、相撲をより身近に感じられる工夫が随所に散りばめられていました。お子さん連れの家族の姿も多く、土俵の外でもあたたかな交流が生まれていたように思います。
また、力士との距離が近いことも巡業の特徴です。土俵入りや花道のすぐそばで力士たちの歩く姿を目にする機会があること、そして彼らが観客と軽くアイコンタクトを交わすような瞬間もありました。そうした自然なやり取りに、この競技が人の手で支えられていることを改めて実感しました。
課題も感じた観戦環境
一方で、イベント全体としての環境面には、いくつか気になる点もありました。
たとえば溜り席は背もたれがなく、長時間の観戦には体力的にやや厳しい面があります。席間もやや狭く、隣との距離が気になる場面もありました。体を傾けるにも気を遣うような感覚は、座席配置の見直しがあるとありがたいところです。
また、会場には車いす席も設けられていましたが、帰りの時間帯には一般の観客と同じエレベーターを使用せざるを得ない状況となっており、混雑時の誘導や案内体制にはもう少し工夫の余地があるように思いました。スタッフの方々は丁寧に対応されていましたが、大規模イベントとしてのバリアフリー対応がもう一段階整うことで、誰にとっても安心して楽しめる場になると感じました。
心に残った一日と、静かな感謝
帰り道、やや疲れた足を引きずりながらも、心の中には満たされた感覚が残っていました。大声を出すような喜びではないけれど、静かにじんわりと広がっていくような、そんな一日。
相撲という文化の持つ力や、力士たちが懸命に土俵に向かう姿に触れたことで、どこか整った気持ちになれたように思います。長い歴史を持つこの競技が、今なお多くの人の心を動かし続けている理由を、少しだけ理解できたような気がしました。
会場で感じたあの時間、空気、そして人々の温度。すべてが当たり前ではないことを思うと、自然と「ありがとう」という言葉が浮かびます。それは誰か一人に向けてではなく、この日をつくってくれた多くの人々と力士たち、そしてこの場所そのものに向けて。
特別なことをしたわけではないけれど、記憶に残る時間になりました。
最後に
大相撲を実際に観に行くという体験は、想像以上に多面的なものでした。土俵上の技の応酬だけでなく、文化、交流、空間そのものが観る側に語りかけてくるような、不思議な力があります。
まだ足を運んだことのない方には、一度巡業の空気に触れてみることをおすすめします。きっと何かが心に残るはずです。そんな一日の積み重ねが、相撲という文化を次の世代に繋いでいくのだと感じた、千葉場所での体験でした。
とてもいい1日でしたが一番最後に自戒の念もこめて、車での来場は控えるべきでした…。まず到着時に千葉ポートアリーナ駐車場入り口が少しわりづらくぐるぐるしている車が多くいました(国道357号沿いの入り口は関係者入り口としてふさがれていました)。また帰りの出庫混雑が激しくて参りました…。イベントが終わってからの駐車場から出るのに何分かかったやら…。